院長のひとりごち　蟹のたてばいよこばい

お盆休み、北アルプスの剱岳に登って来た。剱岳と言えば、日本山岳の中でも急峻で難しい山として有名だ。2年前から山仲間と登る計画を立てていたが、天候不順などで延期を繰り返し、今年で3回目のチャレンジ。さいわい天候も大きな崩れもなく、無事山頂を踏むことができた。

この剱岳は険しい山道が続くのだが、核心部と呼ばれるのが、蟹のたてばい（登山道）とよこばい（下山道）という難所で、遠くから眺めると、登山者が蟹が這いつくばるように岩肌を登り降りしている事から、名付けられたそうだ。

確かに足元を見ると、切り立った崖になっており、過去何度も滑落死亡事故が起きているのも頷ける。落ちたら、ただの怪我では済まないだろう。鎖が頼りにはなるが、三点支持と言って4肢のうち3肢で体をしっかり支え、残りの1肢だけを自由に次の手がかり、足場へ移動する岩登りの基本を守れば、実はそんなに難しいことではない。パリ・オリンピックで日本選手が活躍したスポーツクライミングも、基本は三点支持である。

恐怖感という感情は何の役にも立たないものなので、冷静沈着に一つひとつの行動を着実にこなすことが難所通過のコツであることは、良く理解しているつもりだ。山登りも人生も。

　日本百名山の半分を踏破！